野菜マシマシカラアゲカラメ。

「実録!東大大学院 総集編」編著者のブログです。

愛情ホルモン“オキシトシン”のダークサイド

 長らく更新してませんでしたが、いい加減何か書かないと……。

 というわけで、この前の研究室ゼミで紹介した論文。

オキシトシンは自民族中心主義を増長させる

Oxytocin promotes human ethnocentrism
Carsten K. W. De Dreu1, Lindred L. Greer, Gerben A. Van Kleef, Shaul Shalvi, and Michel J. J. Handgraaf
PNAS 2011 108 (4) 1262-1266; published ahead of print January 10, 2011

オキシトシン視床下部で産生されるホルモンで、ヒトの「信用」や「協力」といった感情が高まる働きがあるとして、一部ではもてはやされている。が、本論文ではこれが自民族中心主義、即ち、自分が属する民族を高く評価し、それ以外の民族を低く評価する傾向を促進させることを主張している。

・Implicit Association Test (IAT;潜在連合テスト):自国民(オランダ人)vs他国民(ドイツ人orアラブ人)
・自国民(オランダ人)と他国民(アラブ人)の情動の度合いを評定
・Moral Choice Dilemma Task(サンデル先生のこれとか。“作業員”を自国民/他国民に設定して比較)

↑の3つの課題を、オキシトシンを嗅がされた人とそうでない人それぞれにやらせたところ、前者に自民族びいきの傾向が出たとのこと。このことから、オキシトシンは単に親和傾向を高めるだけではなく、身内同士の結束を固めるのに作用することを示唆している。

人間は他の動物に比べて弱い生き物なので、生き延びるために群れを作ることにした。そのためには、群れの中の統率を図らなくてはならない……という進化の過程で、身内びいきという特性を身につけていったのかもしれませんね。
ところでここでは自国民=オランダ人に対し、他国民=アラブ人とドイツ人と設定されているのですが、人種が変わるとひいきの度合いも変わりそうですよね。ただそれをやると人権的に面倒なのか、他国民の人種別に差があるのかどうかはこの論文では言及されてないようです。